淡路人形座に新たな風~新入座員入座、若手座員の芸名の命名、清和文楽からの研修生も~
この度淡路人形座に新入座員が1名入座、新たに芸名を1名が命名、熊本県清和文楽より研修生を1名受け入れましたので紹介させていただきます。
2024年度新入座員の「森田 陽菜(もりたひな)」
—初めに淡路人形座に入座したきっかけを教えてください。
私は南あわじ市福良地区出身で、中学校のころから部活動で郷土芸能に触れてきました。その頃から「舞台に立つ感覚」というのが楽しかったです。人形浄瑠璃は他の演劇と違って、役者が前に出ることがありません。私は大勢の人前に立つのが苦手なのですが、演技や舞は好きです。
「自分が表に出ていないのに、舞台上で何かを表現できる」そんな人形浄瑠璃に私は魅力を感じています。
—なるほど、では実際に入座してみての率直な感想を教えてください。
私は高校を卒業後、島外の大学に進学しました。
4年間人形浄瑠璃からは離れていたので、とっても新鮮な気持ちです。
—楽しいと感じていたのにも関わらず、大学在学中は人形浄瑠璃から離れていた?
浄瑠璃文字を読むなどはしていましたが、人形には触れていません。
高校を卒業し、進路を選択する時に、淡路人形座に入座するかどうかとても迷っていました。
そこであえて離れてみて、自分の人形浄瑠璃への想いを確かめる意味もあり進学を決めました。
—そしてその想いは変わらなかった?
そうですね、大学では浄瑠璃文字を読む研究や歴史を学びながら過ごしていました。
そんな中で「人形浄瑠璃をずっと続けていきたい」という想いは、心の中で変わることはありませんでした。
—ありがとうございます、次に今後の夢や目標などあれば教えてください。
浄瑠璃の物語を誠実にお客様に伝えられる人形遣いになりたいですね。
人間のようにしなやかに人形を動かせることも大事なのですが、作品への理解を深めてしっかりとアウトプットしていきたいです。
—理解を深めるとは、台本や参考文献を読み込むということですか?
そうですね、大学生活4年間で浄瑠璃の文献を読み込んできました。読めば読むほど奥が深いんですよ。
まず浄瑠璃本そのままを読むのと、活字化されてる文献を読むのでは理解の難易度が異なります。
活字だと文脈で何となく読み解くことができたりするのですが、浄瑠璃文字から読むと文脈が分からなければ、文字から調べて読み解いていかなければなりません。考古学者が発掘していくような作業を繰り返します。そして時代背景への理解や文学的な視点を持ち、ようやく読み解いたつもりでも読む人によって解釈が違うこともある。奥が深くておもしろいですよ。
—興味のあることに根気強く、継続して打ち込めるのはすばらしいことですね、最後に淡路人形座に来られたお客様へメッセージはありますか?
島内のお客様だと「傾城阿波の鳴門」などは一度観たことがある方が多いのではと感じています。
ただ、話の内容を最初から最後まで理解されているお客様はまだまだ少ないのかなと。一度観たことがある演目でも物語の深い部分を知ってもらえれば、新しい発見とおもしろさがありますよ!
江本未夢(えもとみゆ)が芸名「鶴澤友秀(つるざわともひで)」を名乗る
—江本さんは、去年の新卒で入座し、今回芸名を命名されました。まずは率直な感想を教えてください。
ついにもらってしまったか!という感じです。私は、中学校の時から部活動で人形浄瑠璃をしていました。
その時に、淡路人形座から指導に来ていただい方が「鶴澤」という芸名の方でした。その名前を命名する日が来るとは率直にうれしいです。あと元々は、人形浄瑠璃とは違う道を歩んでいたので、感慨深いものがあります。
—よろしければ「違う道」について教えていただけますか?
元々は看護師を志して大学に進学しました。しかしこの仕事が本当に自分にあっているのか?と次第に違和感を抱くようになりました。そこで人形浄瑠璃への想いが日に日に強くなり、今ここで活動しているという感じです。
—ありがとうございます。江本さんは演目の中で、三味線を弾かれているとお伺いしました。命名までの1年間を振り返ってみていかがですか?
アッという間で短かったです。一番印象に残ったのは、若手会で短い外題を一人で演奏したことですね。
親や家族も観に来ていたので、とても緊張しました。舞台の上で一人で三味線を弾くということに、唇が震え、恐ろしいという感情が芽生えましたよ。ひとつのイベントを終えたという達成感はありましたが、技芸として「ここはできなかったなぁ〜」という反省する部分も多々ありました。
—なるほど、そういった反省を踏まえて、今後の夢や目標を教えてください。
師匠の鶴澤友勇さんを超えたいですね。三味線を弾くにあたって、弾くだけではなく語りを理解し、師匠を超えることを目標に置くことで、成長があると感じています。そして外題への理解も深めて、純粋に技芸を磨いていきたい。お客様が演目に陶酔していただけるような技芸を身に付けたいですね。
—すばらしい目標設定ですね、最後に淡路人形座に来られたお客様にメッセージはありますか?
劇場や舞台の雰囲気に存分に浸ってほしいです。
演劇の迫力だけでなく、静寂な雰囲気にものまれて演者との一体感みたいなものを感じてください!
私たちもそう感じていただけるような演奏ができるようにこれからも努力を続けていきます。
熊本県清和文楽からの研修生「楠原愛理(くすはらあいり)」
—まず淡路人形座に研修に来られたきっかけを教えてください。
私は福岡市出身で、ずっと住んでみたかった熊本県山都町に地域おこし協力隊として移住しました。
そこにある九州唯一の人形浄瑠璃の劇場「清和文楽館」で3年間働いたのち、後継者となるために淡路島に研修に来たという流れです。
—ありがとうございます。次に人形浄瑠璃を始めたきっかけを教えてください。
人形浄瑠璃をしたかったという訳ではなく、まず熊本に惹かれて移住しました。
自然の豊さや食べ物のおいしさ、そして人のやさしさにずっと魅力を感じていたんです。
そして元々伝統文化に興味があったのと、自分が少しでも何かの役に立てればという想いで、清和文楽座に入座しました。私が継承できるかどうかは現時点ではわかりませんが、少しでも長くこの伝統文化が残ってほしいなという想いで活動しています。
—すばらしいきっかけですね、今も地域協力隊に所属しているのですか?
そうですね、国からの特例措置として、地域協力隊のまま淡路人形座で勉強させていただいています。
—なるほど、淡路島に来てみて率直な感想を教えてください。
山都町に比べて暖かくて、過ごしやすいなという印象です。また淡路人形座の皆さんには、日々やさしく色々なことを教えていただいています。本当にありがたいですね。ただ私自身に知らないことがたくさんあるので、毎日右往左往している状況です。
—では淡路人形座に来て半月が経ち、どんな学びがありましたか?
学びがあったというより、観察して、どう感じて、どう取り入れるのか?を考える日々が続いていますね。
お七や狐火の演目を初めて間近で観て、人形の動きや技芸など勉強になりますし、あらすじなどを知っていく過程が楽しいです。
—インプットを楽しめるのはなによりですね。では今後の夢や目標を教えてください。
1年間という限られた時間の中で、できるだけたくさんのことを学びたいなと考えています。
何度も繰り返して、忘れないように自分の中に定着させて、清和文楽座に持ち帰りたいですね。
清和文楽座の座員も熊本でがんばっているので、今は私もこちらで頑張ろう!と感じています。
これからも末永く愛され続ける淡路人形座へ
淡路人形座座員一同は、これからも人形浄瑠璃に真摯に向き合い活動を続けていきます。
皆様の淡路人形座へのご来館を、心よりお待ちしております。