日本経済新聞WEB版に淡路人形座が紹介されました!

兵庫・淡路島の人形浄瑠璃ダンス動画は「キレッキレ」

日本経済新聞WEB版に淡路人形座が紹介されました!

兵庫・淡路島の人形浄瑠璃
ダンス動画は「キレッキレ」
街エクスプローラー

淡路島南端の兵庫県南あわじ市は500年前から人形浄瑠璃が盛んだ。3人で操る人形、迫力ある太夫の声、三味線の音色が物語を生き生きと描く。島で唯一プロとして活動し、今年60周年を迎えた「淡路人形座」では、若手座員たちが伝統をつなげようと、技を磨いている。

潮の香りが漂い、観光客でにぎわう福良港にある「淡路人形浄瑠璃館」。淡路人形座の専用劇場で、一日に4回公演している。

訪れた9月下旬に上演されたのは、生き別れた母と娘の情愛を描いた「傾城阿波の鳴門 順礼歌の段」。何役も演じ分ける太夫の声に三味線の演奏が重なり、物語の雰囲気に引き込まれる。うつむく人形が本物の涙を流すように見えた。徳島県からの女性客が「親子愛に感動した」と目を潤ませていた。

座員による人形の説明や、舞台裏が見学できるツアーもある
淡路人形座は1964年、娯楽の多様化などで消滅の危機にあった人形浄瑠璃を絶やすまいと、地元有志が名門の吉田伝次郎座を継承して発足した。それから60年、定期公演を重ねて、鳴門海峡の渦潮に並ぶ観光の名物となった。

福良港から車で15分ほどの内陸にある市三條地区。静かな住宅地を歩くと、神社前の石碑に「淡路人形発祥地」と刻まれていた。室町後期、西宮神社の人形遣いの百太夫がこの地に移り住み人形繰りを伝えたことで、淡路の人形芝居は始まったという。近くには「淡路人形浄瑠璃資料館」があり、歴史を詳しく学べる。

三条八幡神社の前に建立された「淡路人形発祥地」の碑。同神社は、この地に人形繰りを伝えたとされる百太夫を祭っている

淡路人形浄瑠璃資料館では、かつて名門として活動していた市村六之丞座の人形や道具などを展示。11月4日までは、淡路人形座の60周年記念展も開いている

南あわじ市役所のほど近くにある、等身大の人形浄瑠璃のモニュメント。1999年に旧三原町観光協会が制作した。交差点で道行く人たちを見守っている

江戸時代に入ると人形、浄瑠璃、三味線が融合し人形浄瑠璃が生まれた。淡路では徳島藩の保護もあり、最盛期には40以上の人形座が活動。巡業を通じて人形浄瑠璃を全国に広めた。

淡路の人形浄瑠璃と大阪の文楽との違いの一つは、人形の大きさ。淡路のかしらは文楽の1.5倍大きい。野外で照明がない巡業先の舞台でも観客に見えやすくするための工夫とされる。全国の観客が喜ぶように改良を重ね、動きが大きく派手な「ケレン味」のある演出が多いのも特徴だ。

日を改めて人形座を訪ね、特別に稽古を見せてもらった。公演では黒装束で分からなかったが、座員に若手や女性が目立つ。技芸員16人のうち5人が20代、7人が女性だ。若手は全員が地元出身で、市内の中高の部活動で人形浄瑠璃を経験してきた。男性のみの文楽と異なり、淡路では女性も舞台に立つ。三味線で活躍した鶴沢友路さん(2016年没)は人間国宝に認定された。

森田陽菜さん(23)は部活動で人形遣いを学び、故郷で親しまれてきた人形浄瑠璃を次の世代へ継承することを夢見て、今年人形座に入った。「私たちが舞台に立つことで、同じ若い世代が人形浄瑠璃に親近感を持つきっかけになればうれしい」と話す。

淡路人形座が運営するSNSアカウント。再生回数が100万回を超えた大ヒット作品も
淡路人形座は若いファンを増やそうと、SNSでの情報発信に力を入れる。人気は、人形がヒップホップなどに合わせキレの良いダンスを披露する動画。再生回数が100万回を超える作品もあり「キレッキレで最高」「伝統芸能が現代で輝いてる!」と称賛が多く寄せられる。「SNSで興味を持って来ました」と話す観客が増えたという。

淡路人形座のダンス動画はこちら
TikTok: https://www.tiktok.com/@awajiningyoza
Instagram: https://www.instagram.com/awaji_ningyoza/

新演目やコラボ公演も積極的に行っている。入座35年目の吉田廣の助さん(53)は「伝統が途絶えないように、若手とベテランが一緒に知恵を出し、より面白くて楽しい淡路人形座を創り上げたい」と話す。

劇場に、座員全員で決めたという60周年のキャッチコピーが飾られていた。「この島で これからも」

推しビュー 鳴門海峡「秋の大渦」

淡路島と徳島県との間にある鳴門海峡は、潮の干満差と海底の複雑な地形が生み出す渦潮の名所だ。9月から11月下旬までは、一年で特に干満差が大きい秋の大潮のシーズンで、直径30メートルもの渦潮が発生することも。淡路人形座がある福良港からは「うずしおクルーズ」が毎日出航し、渦の間近に迫る。水しぶきを立てて激しくうねる海に、頭上を走る全長1.6キロの大鳴門橋と、迫力たっぷりの絶景を楽しめる。渦潮の大きさや発生時間は日によって異なるため、うずしおクルーズのウェブサイトで事前に確認しておきたい。

記事・写真・映像
井上容
https://www.nikkei.com/telling/DGXZTS00012280Q4A920C2000000/

編集スタッフの皆様へ
この度は素敵な誌面でご紹介いただき、ありがとうございました!